1.1 概要
本部分放電校正器は、各種電気機器、ケーブル、電気部品、又は、絶縁材料などの絶縁の良否を判定する部分放電試験の際に、
部分放電測定系全体、又は、部分放電測定器本体の校正に用いる校正電荷発生器です。
本器は、気中部分放電及び油中部分放電波形と同等の立ち上り時間をもった波形を、約100P.P.S.の周波数で発生させており、
校正電荷は0〜2500pCまでを任意に発生でき、指示計で直読出来る様になっています。
又、本器は対地間静電容量を小さくするために、電源に電池を用いているので、非接地供試体の校正も正確に行えます。
本器は約500台出荷され大手重電メーカーで多数使われている、NPG-2形部分放電校正器の後継機種です。
1.メータを液晶表示としデジタルアナログのハイブリッド表示としました。
2.容積比でNPG-2に比べ2/3とし小型化しました。
1.2 部分放電
部分放電について、等価回路を用いて説明します。
第1図の部分放電の等価回路において、供試体の全静電容量をCaとすると
C a=C m+C g・C b/(C g+C b) (1)
となります。
次に、供試体C aにV tなる交流電圧(瞬時値)が、印加されると、Cg(空隙)にかかる電圧v t(瞬時値)は、
v t=V t・C b/(C g+C b) (2)
となります。
いま、V tが上昇するに従ってv tも増大し 、VtがC gの放電電圧v gに達し、C gが放電したとすると、供試体Caに生ずる電圧降下儼は、
儼=v g・C b/(C m+C b)≒v g・C b/Cm (3)
(一般にC m>>Cb、Cgの条件が成立する。)
となります。このとき、部分放電により空げき中を移動する放電電荷qrは、
q r=v g・{C g+C m・C b/(C m+C b)}≒vg・(C g+C b) (4)
又、部分放電により、供試体の電極上より失われる電荷qは、
q=儼・C a=儼・{C m+C g・C b/(C g+Cb)}≒儼・C m (5)
となり、(3)式より、儼=v g・C b/C mなので、
q=v g・C b (6)
と表すことができます。そして(4)式より、vg=q r/(C g+C b)なので、
q=q r・C b/(C b+C g) (7)
となり、部分放電が発生した結果、供試体の電極上より失われる電荷qは、空げき中を移動した放電電荷q
rとは違った値になります。
qを見掛けの放電電荷、q rを真の放電電荷と称して区別します。
部分放電測定において測定できるのは、C aと儼なので、(5)式により見掛けの放電電荷qを測定することはできますが、
一般に、C g、C bを測定することはできないので、真の放電電荷q rを測定することはできません。
次に放電エネルギーwは、部分放電前後の回路の充電エネルギーを比較して求めます。つまり、CgとC m・C b/(C m+C b)の並列回路の電圧が、
v gから零まで下がった時の放電エネルギーを求めることになります。放電エネルギーwは、
w={C g+C m・C b/(C m+C b)}・v g2 /2=q r・v g/2 (8)
となります。ここで(7)式より、q r=q・(C g+Cb)/C b、又、C gが放電するときの外部印加電圧の瞬時値をVs(部分放電開始電圧の波高値)とすると、
(2)式より、v g=V s・C b/(C g+C b)なので、
w=q・V s/2 (9)
となり、wは、qと部分放電開始電圧V i(=V s/1.414)とにより、求めることができます。
一般に部分放電測定では、見掛けの放電電荷を放電電荷と呼び、これを測定します。
1.3 放電電荷の校正原理
放電電荷の校正には、直角波電圧を供試体に直列に注入する直列校正法、供試体に並列に微小静電容量を通して注入する並列校正法、
及び、部分放電測定器の入力端子に微小静電容量を通して注入する間接校正法、等があります。
このうち現在では、供試体の静電容量が未知の場合、あるいは分布定数供試体のように不確定な場合でも、正確で簡単に放電電荷の校正ができ、
また、供試体中の特定な個所に標準電荷の注入ができる並列校正法が専ら用いられますので、これについて説明します。
C a:供試体の全静電容量
V t:外部印加電圧
C o:標準静電容量
V o:直角波電圧
第2図 放電電荷の校正原理
第2図に放電電荷の校正原理を示します。供試体Caに外部印加電圧V tが加わったとき、供試体内部の空げきで内部放電が発生し、C aからqなる電荷が失われたとします。すると両電極間には、儼=q/Caの電圧降下が生じます。
次に、外部印加電圧V tを0Vに下げ、供試体Caに既知の標準静電容量C oを通して、直角波電圧Voを印加すれば、C aの両電極間の電圧は
V o・C o/(C a+C o)となり、C aへの注入電荷qoは、
q o=V o・C a・C o/(C a+C o) (10)
となります。このときq o=qとなるようにV oを調整すると、部分放電が発生したときとは極性が反対ですが、C
aからqなる電荷が失われたのと同一の結果となり、放電電荷の校正が行えます。
C o<<C aになるようにC oを選ぶと、
q o≒C o・V o (11)
となり、C aの値に関係なく既知の値C o及びVoのみで放電電荷の校正が行えます。
第3図に実際に部分放電測定を行うときに使用されている測定回路の一例を示します。
C a:供試体の全静電容量
C k:結合コンデンサ静電容量
C d:検出インピーダンス内の静電容量
Z d:検出インピーダンス
M:部分放電測定装置
PG:部分放電校正器
C o:PG内の標準静電容量
V o:PGの直角波電圧
Zch:ブロッキングインピーダンス
S:電源
第3図 部分放電測定回路の一例
部分放電を測定するときには、全測定回路系の校正を行い、測定装置内の指示計の指示値と、実際に発生している
放電電荷との係数をあらかじめ求めておけば、測定が困難な浮遊容量、自己誘導などによる影響を皆無にし、
またC a,C k,C dなどの静電容量が不明である場合でも、正確な測定をすることができます。
第3図の部分放電測定回路の一例において、放電電荷の校正原理を説明します。C
aとC aに加わる静電容量の
合成静電容量をC a′とすると、
C a′=C a+C k・C d/(C k+C d) (12)
と表すことができます。ここでC a′は測定回路の浮遊容量などをも含んでいるものとします。
C a′への注入電荷q oは
q o=Vo・C a′・C o/(C a′+C o) (13)
となります。実際の測定の際には、ほとんどの場合C
o<<C a′の条件が成り立つので
q o≒C o・V o (14)
となり、概知の値C o及びV oのみで放電電荷の校正が行えます。
又、本器では、指示計の目盛をq oの値で目盛ってあるので、校正電荷を直読することができます。
1.4性能
(1)パルス出力
出力電圧 0〜5V,0〜50V,2レンジ
誤差 ±2.5%以下
極性 正,負,2レンジ
立ち上り時間 30nS以下, 1,2,5μSレンジは別売り延長容量ボックスで対応。
繰り返し周波数 約100P.P.S.
出力インピーダンス 50Ω(不平衡形)
(2)発生電荷
校正電荷 0〜50,0〜250,0〜500,0〜2500pC,4レンジ
標準静電容量 10,50pF
誤差 ±3%以下
(3)電源
電圧 DC9V(単2乾電池6個)
消費電力 約780mW
(4)寸法,重量
寸法 約W230mm×H120mm×L120mm(突出部は含まず)
重量 約2.0kg
(5)付属品
付属用リード線 30cm×2
取り扱い説明書 1部
検査成績書 1部