部分放電とは
電気機器、ケーブルなどの絶縁物中にボイド(空隙)が存在する場合の部分放電の等価回路を示します。
第1図 部分放電の等価回路 |
C g:ボイドの静電容量
C b:ボイドに直列に入る絶縁層の合成静電容量
C m:C g,C b以外の供試体の静電容量
V t:外部印加電圧
v g:ボイドの放電電圧
Cgに加わる電圧vtは 外部印加Vtを分圧した値になり |
そして、この部分放電の繰り返しにより、第2図のような先端の鋭いくぼみ(ピット)のようなものが形成されると、そこに放電が集中し、先端の電界が高まって樹枝状(トリー状)の絶縁破壊を生じます。いったんトリー(樹枝状の破壊痕跡)が発生すると、そこに空気層が出来、そこでの部分放電が関与しながら長く伸
びていきます。 部分放電測定では、絶縁破壊に至る前の状態を検出するので、潜在的な不良や、製造上のバラツキも検出できます。 部分放電の規格には以下のものがあります。
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第2図部分放電から絶縁破壊へ |
第3図 Cg(ボイド)の端子電圧の時間的変化 Vp:Cgの放電開始電圧 Vr:Cgの放電消滅電圧 |
第1図の部分放電の等価回路において、供試体の全静電容量をCaとすると
C a=C m+C g・C b/(C g+C b) (1)
となります。
次に、供試体C aにV tなる交流電圧(瞬時値)が、印加されると、Cg(ボイド)にかかる電圧v
t(瞬時値)は、
v t=V t・C b/(C g+C b) (2)
となります。
第3図で、いまV tが上昇するに従ってv tも増大し 、v tがC gの放電開始電圧Vpに達し、C
gが放電したとすると
供試体Caに生ずる電圧降下儼は、
儼=v g・C b/(C m+C b)≒v g・C b/Cm (3)
(一般にC m>>Cb、Cgの条件が成立する。)
となります。v tが上昇する間は、このプロセスが繰り返されます。このとき、部分放電により空げき中を移動する放電電荷qrは、
q r =v g・{C g+C m・C b/(C m+C b)}≒vg・(C g+C b) (4)
又、部分放電により、供試体の電極上より失われる電荷qは、
q =儼・C a=儼・{C m+C g・C b/(C g+Cb)}≒儼・C m (5)
となり、(3)式より、儼=v g・C b/C mなので、
q =v g・C b (6)
と表すことができます。そして(4)式より、vg=q r/(C g+C b)なので、
q =q r・C b/(C b+C g) (7)
となり、部分放電が発生した結果、供試体の電極上より失われる電荷qは、空げき中を移動した放電電荷q
rとは違った値になります。
qを見掛けの放電電荷、q rを真の放電電荷と称して区別します。
(6)式よりq =v g・C b でvg(ボイドの放電電圧)とCb(ボイドに直列に入る絶縁層の合成静電容量)はボイドが大きくなるほど大きくなるので、見掛け上の放電電荷の大きさqはボイドなど絶縁物中の欠陥を表すバロメーターとなり、部分放電測定では専らqを測定します。 (5)式より儼=q/Cmとなり儼はCm(C g,C b以外の供試体の静電容量)の大きさにより変化するので、測定器では儼(供試体Caに生ずる電圧降下)を増幅し測定することになりますが、必ず測定器の目盛りの校正を行い、実際にはqを測定します。 |
C g、C bを測定することはできないので、真の放電電荷q rを測定することはできません。 一般に部分放電測定では、見掛けの放電電荷qを放電電荷と呼び、これを測定します。 |
次に放電エネルギーwは、部分放電前後の回路の充電エネルギーを比較して求めます。つまり、CgとC m・C b/(C m+C b)の並列回路の電圧が、
v gから零まで下がった(Vr≒0 Cgの電荷がほぼ全部放電されたと考える)時の放電エネルギーを求めることになります。放電エネルギーwは、
w={C g+C m・C b/(C m+C b)}・v g2 /2=q r・v g/2 (8)
となります。ここで(7)式より、q r=q・(C g+Cb)/C b、又、C gが放電するときの外部印加電圧の瞬時値をVs(部分放電開始電圧の波高値)とすると、
(2)式より、v g=V s・C b/(C g+C b)なので、
w=q・V s/2 (9)
となり、wは、qと部分放電開始電圧V i(=V s/1.414)とにより、求めることができます。